【住宅ローン消耗戦 地銀で金利引き下げ、上昇リスクも】

自宅戦略を考えるヒント

世界的に金利の上昇圧力が強まる一方で、国内の住宅ローンの変動金利は引き下げ競争が激しさを増しています。

インターネットで銀行間の比較が容易になり、ネット銀行への顧客流出に危機感を抱く地銀も低金利競争に加わってきました。

顧客との長期にわたる付き合いを築けるほか、将来の金利上昇前に顧客を囲い込みたい事情もあります。

ただ金利反転時の家計負担の増加や貸し倒れリスクには警戒が必要です。

横浜銀行は変動金利型の住宅ローンで、給与振込口座に同行を指定した際の優遇金利を、この4月に最低水準の0.385%まで引き下げました。

京都銀行は4月から、ネット経由で申し込んだ人の金利を引き下げるキャンペーンを実施し、最低金利を0.420%としました。

変動金利の引き下げ競争が激しくなっています。消費者はインターネット上で簡単に金利を比較できるためネット経由の顧客争奪戦となっています。

変動金利はメガバンクやネット銀行が先行して引き下げ、ここにきて地銀が競争に加わってきました。

横浜銀、京都銀のほかにも、福岡銀行が昨年秋ごろから0.5%引き下げた優遇金利で提供。山口銀行は22年1月から0.4%下げており、3メガバンクは5月適用分の住宅ローンの変動金利について基準金利を据え置きました。

長期金利の影響を受ける固定型と異なり、変動型は日銀の政策金利に連動します。

現在のマイナス金利政策が解除されない限り、変動型は変わりません。各行は変動型の基準となる金利から独自の優遇幅を設定しています。

その効果は大きく、21年4月にネット手続き限定で優遇金利を引き下げたみずほ銀行は「直後に申込件数が増えた」。21年度の新規実行額は前年比2割増の5000億円前後に達しました。

独立行政法人の住宅金融支援機構が2022年2月にまとめた金融機関への調査で、金利を設定するときに何を考慮するかを複数回答で聞いたところ、全ての金利タイプで9割以上が「競合する他機関の金利」と回答しました。

国債利回りなど参考指標はあるものの、独自の優遇幅で競い合い、低金利を維持せざるをえないのが実態です。

日銀の統計では、国内銀行の住宅ローン残高は21年末時点で136兆円と1年前に比べ4%増えており、銀行にとって住宅ローンは、投資信託や保険などと組み合わせて提案するクロスセル(併売)が狙え、顧客と長期に付き合うための格好の金融商品になります。

大手行関係者は「利ざやは大きくとれないが、金利面の魅力を高め新規実行を増やし、長期的に利益を出すことを優先している」と話しております。

住宅ローンは事業性融資に比べ貸し倒れリスクも低くく、国内銀行で預貸率の低下傾向が続くなか、積極的に貸し出す意義は大きいです。

一方、低金利が是正される世界的な方向感は変わりません。

5月の10年固定型の基準金利は三菱UFJ銀行と三井住友銀行で0.15%、みずほ銀行で0.1%の上昇となりました。

米国が政策金利の引き上げに動くなか日銀は据え置きを続け、歴史的な円安を招いており、金融緩和政策の見直しを求める声も上がっています。

政策金利に連動する変動金利にも今後、上昇圧力がかかる可能性があります。

米国などでは金利上昇前に駆け込み需要がみられました。国内銀行も今のうちに住宅ローン需要を取り込みたい事情もあります。

ただ、実際に金利が上昇すれば国民の金利負担は膨れます。

足元の住宅ローン利用者の約7割は変動金利を選んでいます。

住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFS(東京・千代田)は、変動金利が1%上昇すると国民全体で年1.1兆円の負担増になると試算しています。

低金利によって毎月の返済額が軽くなれば、返済能力以上のローンを組んでしまう恐れもあり、貸し倒れリスクには警戒が必要です。銀行間の引き下げ競争は「限界に近いのが本音」(大手行担当者)。

この点からも変動金利の低水準がいつまでも続く保証はありません。

期間固定型を選んだとしても、固定期間が終わったとたんに高い金利に変わることもあります。

借りれるお金と返せるお金を分けて考える必要があります。

余裕のある返済計画で金利上昇のリスクヘッジを行いましょう。

関連記事

カテゴリー

アーカイブ