構想通りに住宅購入が資産形成へ結びつくかは不透明な面もあります。
最大の不安材料は、持ち家率とともに膨らんでいる住宅ローン負債額です。
家計調査では29歳以下の負債は増加傾向にあり、20年は690万円と02年比で約440万円増えております。
同年代の貯蓄と負債のバランスをみても、06年からは負債が超過しており、持ち家率が伸びた過去数年は、その超過額が高止まりしています。
負債は30代など他世代でも一部で増えていますが、貯蓄・収入ともまだ低めの29歳以下の世帯が負うリスクは相対的に大きいと言えます。
住宅ローンの支払い額を無理の無い範囲に設定する事が変動金利や収入減に対するリスクヘッジになります。
現在、ローン金利は変動型が優勢となっています。
住宅金融支援機構の21年4月調査によると、ローン利用者の実に68.1%が変動型を選んでいます。
長ければ30年以上に及ぶ借入期間中に不測の金利上昇に見舞われる可能性もあります。
ある程度の貯蓄がある熟年世代なら繰り上げ返済などで対処できる例もあるが、若い世代は容易ではありません。
仮に金利上昇に見舞われることなく、ローンを完済できても、気づかぬうちに別の問題が家計に起きている可能性もあります。
一般に多額の住宅ローンを抱えた世帯は、資産を株式や投資信託などの金融資産へ振り向けにくくなる傾向があります。
返済などに備えて、普通預金など流動性資産を手厚くする心理が働き、投資や運用には手が回らなくなる状態です。
「人生100年」とも言われる長寿社会を視野に入れると、若いうちから時間をかけて積立投資などに取り組むことが効果的ですが、早期の住宅購入の負担がその余力をそぐこともあり得ます。
結果として、「住宅は手元に残ったものの、老後資金は心もとないという世帯も出てきかねません。
それでも持ち家の資産価値が高ければ、老後には家を売却してより安価で小規模な住宅へ移り、介護施設の入居費に充てたりという選択肢があります。
ただ、予想に反して、家の資産価値が大幅に下落するようだと、老後資金不足の問題はより深刻にのしかかってきます。
メリハリを付けたお金の使い方が目立つ若い世代。そうした層が以前に比べて、積極的に住宅購入を検討できることは本来、好ましい状況です。
ただ、やはり購入金額が他のものとは桁違いの住宅にはリスクがつきまとうのも事実です。
投資家目線で資産価値の高い物件を選ぶことが人生を豊かに生きる重要な要素となります。
今後、一段と進展する少子高齢化の中、若い世代の持ち家率がどう推移していくのかは日本経済の行く末を占う指標の一つとなるかもしれません。
2021年法改正で住宅ローン減税の対象面積が50平米から40平米に引き下がりました。
今まで住宅ローン減税が使えなかった1LDKの間取りもローン控除の対象となりました。
若い世代の物件購入意欲が今後、益々高まる事が予想されます。