中古の戸建てやマンションの価格が上昇しています。
新型コロナウイルス禍で持ち家志向が高まる中、新築住宅に匹敵する人気を集めています。
中古市場の拡大でリノベーションを手掛ける業者も増加し、専門業者が再生販売した戸数は過去最高で推移しています。
住宅市場における中古物件の価値が上がり、日本人の新築信仰が変わる兆しがみえています。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、8月の首都圏の中古マンションの成約価格は前年同月比3.5%高い3773万円。
15カ月連続で前年同月を上回りました。
中古戸建ても同6.1%高い3425万円で、10カ月連続で前年超えです。
近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)の8月調査でも中古マンションの成約価格は同5%高の2519万円、中古戸建ては2132万円と同7.8%上昇しています。
新築住宅も上昇傾向が続き、不動産経済研究所(東京・新宿)がまとめた、7月の首都圏の新築マンション価格は同6.1%高い6498万円。
マンションに比べ割安感がある戸建て住宅も不動産サービス大手アットホーム(東京・大田)の7月調査では、首都圏の平均価格は同2.7%高の4031万円と4000万円を超え、過去最高水準に達しています。
鉄骨や木材などの資材費や現場の人件費といったコスト高が進んでおり、今後も価格転嫁は進む可能性があります。
人気エリアを中心に土地代も高騰し、住宅価格の上昇が止まる気配は見当たりません。
新築住宅の値上がりに割高感を持つ層が、中古住宅に目を向けています。
コロナの感染拡大による環境変化で持ち家志向は強まっています。
新築の人気は高いですが、利便性や居住面積などの条件を重ねると価格もどんどん高くなります。
コロナ前には新築マンション価格が高騰し、駅近・都心の新築小規模戸建てが人気を集めていました。
ここにきてその流れは中古市場に向かい始めています。
2020年11月から中古マンションに住む会社員の女性は「中古マンションを購入することに不安もありましたが、管理状態や修繕計画を確認して頂いたり、将来的に資産価値が下がりにくいエリアでもあることを話して下さり、購入を決めることが出来ました。」と満足げ。室内がフルリノベーションされた都内の中古マンションを手に入れられました。
新築と比べた安さに加えて、在宅勤務に困らない部屋の広さやデザイナーが手がけたフルリノベーションの室内など、コロナ禍の巣ごもり生活を快適にする設備も魅力との事です。
新築が高いから中古という単純な構図ではなく、独自性や趣味性の高い住まいを構えるための、「ハコ」としての需要が中古住宅の価格を押し上げています。
需要増に対応してリフォームやリノベーションで古い住宅の再生に注力する業者も増加。在宅勤務の増加など新しい生活様式を背景にした需要を取り込んでいます。
前の所有者の生活感を感じさせない状態にリノベーションする事も可能でリフォーム時に在宅勤務ができる作業スペースを設けるなど、コロナ禍の新常態に即したリフォームにも対応可能です。
一方、売りに出る中古物件はコロナ禍の影響で減少しています。
東日本レインズのデータでは8月の首都圏の中古マンションの在庫は前年同月比19%減。中古戸建ては30.7%減り、中古価格上昇の主因となっています。
東京カンテイ(東京・品川)は「新築や中古住宅の価格が上がりすぎれば、値上がりについていけない層が広がる。住宅の選択肢が減り、賃貸にとどまったり、条件が合わない地域に住んだりせざるを得なくなる」と指摘されています。
かつての「住宅すごろく」は賃貸住宅から始まり、新築マンションを買い、最後に戸建て住宅を建てることがアガリで、中古住宅のマス目はありませんでした。
新しい生活様式を背景にした中古住宅の値上がりは、新築住宅に連れ高しているだけではなく、新しい需要の姿を映しています。