2020年に新型コロナが日本へと上陸し、同年4月には東京都で初の緊急事態宣言が発出されました。
リモートワークが推奨され、学校の休校、イベント自粛等、感染収束に向けたさまざまな措置が取られてきました。
そして2021年7月、東京では4回目の緊急事態宣言が発令され、8月後半には対象地域が拡大するなど、いまだ収束のシナリオは見えてこない状況にあります。
不動産市場において、最も影響が大きかったのは最初の緊急事態宣言が出された2020年4~5月頃でした。
例えば首都圏の中古マンション市場においても、成約件数が半減するほど大きな落ち込みが見られました。
しかし、緊急事態宣言を終えると、たまっていた需要が噴き出したかのように好調に推移していましす。
首都圏の中古マンション成約件数は2021年7月こそ前年比で 4.9%減少しているものの、これは実に5カ月ぶりのことです。また、7月の首都圏における中古マンション成約平米単価は前年比で8.4%上昇、20年5月から15カ月連続で前年同月を上回っています。
その一方、中古マンションの在庫件数は、コロナ以前の19年頃から減少の一途をたどっているという背景もあります。
ニーズが多いにもかかわらず在庫が少ない状況下にあり、需給バランスの崩れも価格の上昇要因につながっています。
新築マンションについても、7月の発売戸数は昨年11月より減少していますが、価格、契約数ともに上向きです。
いまだ収束の兆しが見えないコロナ禍をよそに、不動産市場は活況が続いているのが現状です。
【在宅勤務やリモートワークが普及しても
都心回帰が進んでいく】
在宅勤務、リモートワークが普及すれば、地方移住も促進される。
――最初の緊急事態宣言が出された頃、よく聞かれた言説です。
もちろん、完全に遠隔勤務が可能な業種・業務であれば地方移住も選択肢となるかもしれません。
しかし実際のところ、完全リモートで地方に移住して業務を遂行できる人はほんの一握りにすぎない現状です。
コロナ禍で在宅時間が増えたことは、「住まい」を見直すきっかけにもなりました。
共働き世帯にとって、夫婦それぞれが仕事をするスペースを用意する必要があります。
また長い時間を過ごす自宅は、それなりのゆとりのある空間にしたいと考えたとき、賃貸では手狭に感じる層が、「住まいの見直し」を優先しました。
住宅ローンは変動金利であれば0.4~0.5%、固定金利なら住宅金融支援機構のフラット35は1%台前半の超低金利時代が続いています。
さらに毎年のローン残高の1%を所得税から10年間控除でき、住宅ローン控除の適用期間が13年間に延長されました。
住宅購入層のニーズが制度面でも後押しされ、新築・中古どちらも新規の購入層が増加しています。
すでにマンションや戸建てを所有している層は、間取りを含め現在の住まいに満足していると考えられます。
そしてここ10~20年以内に、そこそこ良い立地で購入した物件の価値は、そのままか値上がりしていく事が予測されます。
その場合、高値で売れるものの、他の物件の購入に二の足を踏む動きもあり、なかなか新規の売り出しにつながらないでしょう。
賃貸からの買い換え層が増える中、売り出しは少ない状況にあって、在庫自体もどんどん減少し続けていくと思われます。